アドビシステムズは4月4日、米Googleやイワタなどと共同開発した新たなオープンソースのフォント「源ノ明朝」を発表した。無償で利用できる。
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源ノ明朝の発表後、ネット上では「武将の名前みたい」「歴史上の人物かな?」と話題になり、トレンド入り。
日本語のデザインを担当した西塚涼子さん(@ryon106)も「ネーミングが先行している感じはありますね(笑)。源頼朝と言われたり、鎌倉時代っぽいと言われたり…。けれど好意的に受け取っていただき、嬉しいですよ」と話す。
なぜ、このような名前になったのか。どういった点に留意してデザインしたのか。BuzzFeed Newsは、西塚さんに聞いた。
名前はジブリメソッドを生かした
Takumi Harimaya / BuzzFeed
西塚涼子
1972年、福島県生まれ。アドビシステムズ 研究開発本部 日本語タイポグラフィ タイプフェイスデザイナー。1995年、武蔵野美術大学 造形学部 視覚伝達デザイン学科卒業。1997年、アドビシステムズに入社。小塚昌彦氏の指導のもと、「小塚明朝」、「小塚ゴシック」の開発に携わる。その後、アドビオリジナルかな書体「りょう」および「りょうゴシック」ファミリー、フルプロポーショナルかな書体「かづらき」、「源ノ角ゴシック(Source Han Sans)」をリリース。モリサワ国際タイプフェイスコンテスト、NY TDC審査員賞など多数受賞。
はじめに、源ノ明朝を無事公開したいまの心境を語る。
「日本だけではなく、各国とのやり取りやパートナー企業も絡んだ壮大なプロジェクトだったので、まずはホッとしていますね」
「その反面、やはり反響は気になります。日本だけではなく、韓国ではどうなのか。中国ではどうなのかも気にしないといけないので心配な部分もあります」
ネーミングは1年以上の歳月をかけて、4カ国(日中韓米)間で検討を重ねた結果、「Source」をキーワードに各国に適した名称が決定された。日本名は「Source」を意味する「源(ゲン)」という漢字を使用することに。
「みなもと」は歴史上の人物にもいるように、日本で浸透している言葉だ。アドビとしては、独自のフォントであることが明確に識別できるような特別な名称を選んだ。
そこで「源ノ(ゲンノ)明朝」、という漢字と仮名およびその発音を採用することに決定した。
「『源』は浸透している言葉ではあるのですが、フォント名だとわかってくれるか難しい部分があり…。そこで間に『ノ』を挟もうとなったんです。『風“の”谷のナウシカ』や『魔女“の”宅急便』のようにジブリメソッドを踏襲して日本語のイメージを加えたんです」
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また、中国語フォント名 の「思源」は中国の故事「飲水思源(いんすいしげん)」という四字熟語からきており、「水を飲むときはその源を思う」「幸福になってもその由来を忘れない」という意味があるそう。
また、こんな裏話も話してくれた。
「名前がなかなか決まらなかったとき、『ソース』という言葉を日本でも使おうとなったことがあって。けれど、日本にはブルドッグソースとか、ウスターソースとかあるじゃないですか? 戦国武将どころか『焼きそば明朝』『ペヤング明朝』と呼ばれるかもしれないからやめようと説得したり(笑)。迷走してここまで辿り着きました」
最大の特徴は「デジタルデバイスに最適化」
▲デスクで作業に向かう西塚さん
Takumi Harimaya / BuzzFeed
源ノ明朝、最大の特徴はどこなのか?
「デジタルデバイスに最適化した点ですね。源ノ明朝は小塚明朝をベースにアレンジしたものなのですが、小塚明朝は横線が結構細いんです」
「デジタルデバイスはディスプレイの背景が光っているので、文字が潰れないように横線を太くしたり、ストレスを感じさせないよう文字の抑揚を調整したり工夫しています」
源ノ明朝は、小塚明朝をベースにアレンジしたもの。しかし、小塚明朝はモダン系フォントなので、横線が細い。それではデジタルデバイス上で文字が潰れてしまう。また、明朝は抑揚が強ければ強いほど、チラツキが目立ってしまい、読者にストレスを与えてしまうため、調整をかけた。
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どのような場面で自身がデザインしたフォントが活用されてほしいのか。
「やはりデジタルデバイスを意識して開発したので、スマホやタブレットなどで使われると嬉しいですね。スマートフォンはゴシック縛りですけれど、明朝に変えて読むことができたりとか、ブラウザが縦書き対応になったときに源ノ明朝を採用してもらえると嬉しいです」
最後に西塚さんはこう語る。
「今後も新たなデバイスが誕生したら、それに適したフォントを開発し続けるだけ。例えばVRが普及したらVRに適したフォントを作ります。日本語が消えない限り、フォントも消えないので」
▲アドビ「Photoshop」の透明背景の前でパシャ
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