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Channel: BuzzFeed - Takumi Harimaya
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サントリーのビールCM炎上の舞台裏 電通社員「炎上を狙うことがある」

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サントリーが7月4日に発売開始したビール「頂(いただき)」。そのPR動画の内容が「不快」「卑猥」と指摘を受けて、公開中止となった。

CMの炎上と公開中止は、なぜ繰り返されるのか。BuzzFeed Newsは、担当した代理店に勤務する現役社員らに話を聞いた。

同商品の売りは「高麦芽量」「高醗酵」「高炭酸」。3つを兼ね備えた力強いコクと飲みごたえを、謳い文句にしている。

4日の発売に伴い、6日から「絶頂うまい出張」と題するPR動画を特設サイト、YouTube、Twitter上で公開した。

北海道、東京、神奈川、愛知、大阪、福岡の6都市を舞台に、全国各地の人々が「頂」を飲んで“幸せの絶頂へ向かう”姿を描いた動画だった。

動画は男性からの視点で作られており、各都市で出会った女性と食事をするという内容。視聴者はまるで女性と一緒に食事をしているように感じる作りだ。

その中で「お酒飲みながらしゃぶるのがうみゃあ」「コックゥ〜ん!しちゃった…」などといったセリフがあった。

これにネットユーザーから「不適切」「卑猥」といった批判の声が上がった。サントリーは翌7日に公開を中止。公式サイトには以下の謝罪文が掲載された。

お詫び

「絶頂うまい出張」については、視聴されたお客様からのご意見を受け、公開を中止いたしました。

今回皆様からいただいたご意見を真摯に受け止め、今後の宣伝活動に活かして参ります。

公開中止後もSNSを中心に批判の声は続いている。サントリーだけではなく、広告代理店にも矛先が向かった。

「燃えて当然」現役電通社員の胸中

「燃えて当然」現役電通社員の胸中

時事通信

代理店は、国内最大手の電通グループだった。PR動画の狙いは何だったのか。炎上は予測できなかったのか。複数の現役電通社員がBuzzFeed Newsの取材に、匿名で応じた。

炎上した動画の制作担当者を知る同僚は「『炎上やむなし』という感じだったようだ」と話す。

問題になった「絶頂うまい出張」はウェブのみでの展開だった。テレビCM版では唐沢寿明さん、板谷由夏さんを起用し、「コックゥ〜ん」という文言は使っているものの、ウェブ版のような卑猥な連想をさせるものはない。

なぜ、ウェブ版はテレビ版と違い炎上の危険性がある内容となったのか。この同僚は、ウェブ広告の見られ方に原因があると解説する。

「ウェブなら、燃えたほうが話題になるので、炎上スレスレ。または炎上狙いをすることがあります。普通のウェブコンテンツって全然アクセスがないんです。商品の広告をわざわざ見る人はいないので」

ネットでは炎上でも何でも、話題になりさえすれば、コンテンツは次々と拡散される。TwitterやFacebook、ネットメディアも取り上げる。

「それで結果的にたくさんの人が見る」ことを狙うという。

実際、YouTubeには公開中止になったいまも問題の動画が数多くアップロードされている。削除前に保存し、許可を得ないままにアップした人たちだ。「証拠」として残す人もいれば、それで再生回数を稼いでいる人たちもいる。

炎上はPRになるのか

別の社員は「燃えて当然」と感想を漏らし、「クリエイティブの悪ノリ」を指摘した。話題になるために、より目立つ、より過激な表現に走りがちになる。その力学がネットはテレビよりも強いのかもしれない。

しかし、炎上することは、PRになるのだろうか。むしろ、ブランドを毀損するのではないだろうか。

前出の同僚は看板商品の広告だったら違っただろうと解説する。新商品だから、インパクトや話題性がより重視される。

「これがサントリーの看板商品だったら土下座ものです。頂という新商品だからこそでしょう。イメージが悪くなるのはおっしゃる通りなので諸刃の剣ではありますが」

「クライアントの希望する『バズらせろ』『商品を売れ』という要望を満たすのが正しいのか。倫理的に正しいと言われていることをしてアウトプットを適正なものにするのが正しいのか、です」

もちろん、片方に完全に偏る訳ではない。バズらせることと倫理的な正しさ、どのようにバランスを取っているのか。

「それはクライアントのさじ加減次第。さすがにクライアントも『燃えてもいい』とは言いませんが、普通のプロモーションをしても達成できない要望をしてくることはあります」

繰り返される炎上、どこまでが「許される表現」か

繰り返される炎上、どこまでが「許される表現」か

▲プレスリリースより

サントリー

今回の件については、すでに複数のネットメディアが「指摘相次ぐ。公開中止」などと報じている。BuzzFeed Newsも含めて、記事にする際、動画の内容や商品名を用いる。

商品名を印象付けることには成功したと言えるのかもしれない。ただし、ブランドのイメージの向上には繋がらない。むしろ、逆だ。

昨今、ネットのPR動画を巡っては「問題点の指摘→批判の拡大→削除」という流れが多くなっている。一部を列挙する。

  • パチンコ・パチスロ動画を無料配信する「ジャンバリ.TV」のSMAPパロディー
  • 「C CHANNEL」で掲載されたソフィ「ソフトタンポン」


毎回、削除後に「あれぐらいの表現なら、良いのではないか」という意見も出てくる。今回のサントリーの動画でもそうだった。

今回の動画では、女性の描かれ方が男性目線で「下品」「気持ち悪い」などと批判されて削除に至った。だが、男性目線で下品な表現は日本社会に溢れている。

ネットでは一定数の批判が出てくると、その批判がシェアされ、拡散され、ネットメディアが取り上げ、検索され、さらに批判を呼び、あっという間に炎上状態になる。

そもそもネット上にはないために誰かがアップしないといけない紙やテレビのコンテンツよりも、ウェブコンテンツの方が上記のサイクルが発生しやすい。

しかし、「炎上→削除」が相次げば、ネットでの表現の幅は確実に狭まっていくだろう。本質的に何が問題なのか。どこまでが許される表現なのか。

その議論がなければ、過ちが繰り返されるか、行き過ぎた自主規制が始まるのではないだろうか。



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