放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は3月8日、東京MX(以下、MX)で放送された情報バラエティー番組「ニュース女子」について「申立人の名誉毀損と人権侵害」との勧告を発表した。
委員会の中島徹委員(写真左)と坂井眞委員長
Takumi Harimaya / BuzzFeed
該当放送回は、2017年1月2日に放送された沖縄基地問題の特集と、翌週9日のネット上の反響をまとめた回。
番組では、米軍ヘリパッド建設に反対する人たちを「テロリスト」と表現したり、「日当をもらっている」「組織に雇用されている」などと伝えたりした。また、日当については人権団体「のりこえねっと」が払っていると指摘。
「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉氏は申立書を委員会に提出していた。
「本番組はヘリパッド建設に反対する人たちを誹謗中傷するものであり、その前提となる事実が、虚偽のものであることが明らか」としたうえで、「あたかも『テロリストの黒幕』などとして基地反対運動に資金を供与しているかのような情報を摘示」としていた。
また、「申立人が外国人であることがことさらに強調されるなど人種差別を扇動するものであり、申立人の名誉を毀損する内容である」とも訴えていた。
委員会から出された判断は「名誉毀損の人権侵害が成立する」。
委員会はMXに対し、考査を含めた放送のあり方を検討し、再発防止に努力するよう勧告した。勧告は、委員会の判断としては最も重い。
「珍しく現地取材をしていた」ニュース女子を信じた理由
DHCテレビジョン / Via youtube.com
委員会は「名誉毀損の人権侵害」に加え、放送倫理上の問題があるとも判断した。
そもそも同番組はスポンサーが制作費などを負担し、制作会社が番組を作って、放送局は納品された完成品(完パケ)を放送するいわゆる“持ち込み番組”だった。制作は化粧品大手「DHCグループ」傘下の「DHCテレビジョン」が担っている。
MXは今回の件について、企画・制作に関わっていない番組であっても「放送責任が当社にあることは承知しております」と自らの責任を認めている。
委員会が放送倫理上の問題があると判断した理由は、以下の2点。
- 放送対象者に取材を行わなかったことを容易に考査で指摘できたのにも関わらず怠り、『特段の問題が無かった』とした。
- 人権や民族を取り扱う際に必要な配慮を欠く放送内容なのに問題としなかった。
委員会がMXにヒアリングをし、まとめた報告書によれば問題の放送回について考査を通した理由として、MXは以下のような説明している。
- 「(辛淑玉氏には)今回は取材しなくても別の機会で取材すればよいと判断」
- 「制作に関与していないため考査で取材内容のすべてを判断できるわけではない」
- 「番組として珍しく現地取材に行っているので、それなりに取材をしたものと信じた」
「珍しく取材を行った」というだけで、番組の内容に裏付けがあると信じたという理由について委員会は「考査の責任放棄」と非難している。
MXは委員会の勧告をうけ、「当社は、この勧告を真摯に受け止め、現在進めている再発防止策を着実に実行して、信頼される放送の推進に努めて参ります」とのコメントを発表した。