「一休さん」と聞いたら、どのような姿を思い浮かべますか? 中には、幼少期の”とんち小坊主”を思い出す人もいるかと思います。
しかし、アニメや絵本で描かれているとんち話の多くは、後世に生み出されたフィクションです。
“リアル”な一休さんとは……。大人になり、本来の姿を描いたアニメ「オトナの一休さん」が、Eテレで放送中です。
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同番組は、当初、ラジオ第2放送でラジオドラマとして放送。6月にパイロット版が放送され、10月にレギュラー化が決定しました。毎週水曜日10時45分〜50分に放送。
オトナの一休さんが、私たちに教えてくれることは? BuzzFeed Newsは、番組ディレクターの藤原桃子さんに聞きました。
▲番組ディレクターの藤原桃子さん
Takumi Harimaya / BuzzFeed
破戒の限りを尽くした、一休さん
室町時代に実在した禅宗の高僧、一休宗純(1394〜1481)。アニメなどで私たちがイメージする、とんちが得意な一休さんのモデルとなった人物です。
「2年前、取材していたとき、『一休さんは、破天荒な人だった』と聞いて、心に引っかかるものがありました。そこで『オトナのための一休さん』というキーワードを思いついて。国民的アニメでかわいらしいイメージのある一休さんを、大人版にしたらおもしろいのでは?」
オトナの一休さんは、破戒の限りを尽くし、風変わりな見た目と言動で人々を驚かせ、自らを「妖怪」と名乗っていました。とんち坊主のかわいらしい姿は、ありません。
「視聴者のみなさんの反響をみて、してやったりという気持ちと、一休さんのイメージを壊して申し訳ないという気持ちの半々です」と藤原さん。
本当の一休さんの姿とは。
▲26日放送の第4話では、ムード歌謡を披露する…
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作中には「無縄自縛」という禅の言葉が出てきます。これは、ありもしない縄で自分を縛っている様を表す仏教用語(過去の失敗や成功に縛られがちな現代人にも当てはまりそうな言葉)。
「一休は、その縄を解いてくれるトリックスターだと考えています」と藤原さんは語ります。
例えば、第一話の「クソとお経」。弟子たちが読経をしているところに、一休さんが現れます。そこに持ってきたのは、まだ湯気が立っているクソ。その下には、なんとお経がありました。
兄弟子が激怒しますが、一休さんは鼻を鳴らし、「無縄自縛だな」と言い放つのです。
▲収録風景。一休役は、板尾創路さんが務める
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脚色はつけられるものの、エピソードの種は史実から収集。文献や脚本を担当しているふじきみつ彦さん、研究者の力を借り、真実に近い一休さんの姿を描こうとしています。
では、なぜ「オトナの一休さん」をいま描くのでしょうか。藤原さんは、一休をパンクロッカーに例えます。
「右習えで、言いたいことが言えない時代。その中で、一休はおかしいことは、おかしいと言え、現代にはあまりいないタイプです。それでいて、エンターテイメントであり、時代を切り開いてきた人物。なんか、昔のエレカシに似ているなって(笑)」
「仕事でヘトヘトになって帰ってきたあと、『一休もこうなんだから、もっと気楽に考えよう』となってくれればうれしいです。現代のストレス社会に、一休さんは必要な存在なのかもしれません」