カップ焼きそば「一平ちゃん」でお馴染みの明星食品は、昨年12月に「ショートケーキ味」を発売した。
明星食品 / Via myojofoods.co.jp
その翌月には、「チョコソース」を発売した。
明星食品 / Via myojofoods.co.jp
なぜ明星は、ここまで“変わり種味”を発売するのか。そこにメリットはあるのか。BuzzFeed Newsは同社を訪れ、その狙いを聞いた。
遊びじゃない。売上アップに結びつく戦略があった
▲変わり種味の仕掛け人
Takumi Harimaya / BuzzFeed
明星の主力商品である「一平ちゃん」は「ソース」「塩だれ味」「辛子明太子味」だ。
それ以外にバリエーション商品として、 今回のショートケーキ味やチョコソースなどを発売している。
同社マーケティング本部の松川賢一さんは、BuzzFeed Newsの取材に答える。
「大きな狙いとしては、バリエーション品を投入することで、定番品を活性化。また鮮度感を持たせることが目的にあります」
「『ショートケーキってどんな感じなんだろう?』と店頭に探しに行ってくれる。そのとき、横に並ぶソースに目がいって『やっぱりソースでいいや』と思ってくれてもいいのです」
- 明星食品として鮮度ある話題を提供する
- 変り種が存在感を出せば、つられて定番品も注目される
- 結果として、定番品の売り上げも上がる
試しにバリエーション品を食べてみて「やっぱりソースがいいよね」とユーザーが思えばその商品は役目を果たしたことになる。
では、変り種の売り上げは?
「もちろんバリエーション品単体が売れたら御の字ですが、主力商品の“幹”を太くするのが一番の目的です。決して、バリエーション品だけで売り上げを伸ばすことは目標にありません」
バリエーション品の効果なのか定かではないが、狙い通りソース味の売り上げは好調だという。
意外と言っては失礼だが、ショートケーキ味とチョコソースの売り上げ自体も悪くないという。松川さんは「想定外の数字です」と話す。
失敗と成功をわけるポイントは?
▲これまで発売したバリエーション品たち
Takumi Harimaya / BuzzFeed
すべてのバリエーション品が成功するわけではない。失敗と成功をわけるポイントはなにか?
「今回の商品開発にあたり、最も重要にしたポイントは『味が想像つかないもの、経験したことがないもの』です。“甘い焼きそば”って誰も想像できないと思うんです。そのぶん、出たときのインパクトが大きい」
「しかし、甘いものを軸に考えていっては幅が狭くなってしまう。生産リソースをかけても新しいものに挑戦していく社風になっている。いろいろな可能性を探っていきます」
あまり反応がよくなったものとしては「タイ風グリーンカレー味」をあげる。
「そもそもグリーンカレー自体が苦手な人が多いのが敗因かもしれない」と松川さん。
▲タイ風グリーンカレー味
明星食品 / Via myojofoods.co.jp
記者が疑問に思っていたのが、作っている本人たちは「おいしい」と思っているのか? という点だ。
「当然、私自身はおいしいと思って作っています(笑)。けれど、社内では賛否ありますね。個人の好みや経験したことがない新しい味わいに挑戦していますから」
「賛否ある中で、これが苦手な人もいるだろう、と。でも好きな人もいると思って作っています。決して、マズいものを作ろうとは思っていませんよ」
コミュニケーションのきっかけになりたい
▲BuzzFeed社内でシェアしているようす
Takumi Harimaya / BuzzFeed
挑戦的な味に挑戦すれば否定的な意見も上がる。批判の声は怖くないのか?
「批判よりも、なにも反応がない方が怖いですね。『マズい』という人も愛情があるからこそ言ってくれると思っています」
松川さんは続ける。
「これは願いでもあるんですが、うちの商品がコミュニケーションのきっかけになれればと思っています」
「職場や家庭、学校などで『なにこれ!』とか『意外とおいしいよ』とみんなでシェアしながら、感想を言い合う。罰ゲームでもいいので、そういったコミュニケーションツールになれればうれしいです」
事実、記者がオフィスで食べていると「一口だけちょうだい」と部員同士で分け合う場面がある。
バリエーション商品の過熱化
日清 / Via nissin.com
日清は1月23日、「どん兵衛 すき焼き」「カップヌードル 抹茶」「UFO 梅こぶ茶」を発売。
また東洋水産も同日、「甘〜いきつねうどん」を販売開始した。
ほかにも、まるか食品から「ペヤング チョコレート」が発表された。
東洋水産 / Via maruchan.co.jp
各社、ユニークな味の開発に力を入れる背景にはなにがあるのか?
「草分け的存在は、弊社のチョコソースかもしれません。これまで即席麺業界に甘いものがなかったので、それだけ目立つという傾向はあると思います」
しかし、「梅こぶ茶」も「すき焼き」も味の想像がつかないだろうか?
インパクトでは、ショートケーキ味が勝り、「そんなに遊んでいないよね」「攻め切れていない」という声も見られる。
最後に、今後予定している味はあるのかを聞いた。
「具体的な味は言えないのですが、開発中ではあります。インパクトでいえば、ショートケーキ味と同じかそれ以上を狙いたいと思います」
松川さんは「楽しみにしていてくださいね」と笑みを浮かべていた。