政府が漫画などの海賊版サイトに対するブロッキング(接続遮断)を事実上求めたことを受け、NTTグループがブロッキングを行うことを23日に発表した。
これに対し、埼玉県の中澤佑一弁護士が「通信の秘密の侵害」に当たるとして、同社に対しブロッキングを行わないよう求める訴訟を東京地裁に起こすことが26日、わかった。
一連の海賊版サイトブロッキング問題で、提訴が明らかになるのは初めてだ。
訴状によると、原告の中澤弁護士はNTTコミュニケーションズとネット接続契約をしている。その規約や約款のどこにもアクセス遮断の根拠となる規定が存在しないとしたうえで、アクセス遮断が、通信の秘密の保障を求める電気通信事業法に違反するとしている。
時事通信
経緯を振り返る
漫画や動画などのコンテンツを違法にアップロードした「海賊版サイト」が社会問題になるなか、政府が対策を打ち出したのは、4月13日のことだった。
知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議で、民間事業者(プロバイダー)が「自主的な取り組み」として海賊版サイトへのアクセスを遮断(サイトブロッキング)できるよう制度を検討する、との緊急対策を決めた。
このとき、発表されたブロッキングの対象サイトは、「漫画村」「Anitube」「Miomio」3サイトと、これらと同一と見られるサイトとした。
「自主的な取り組み」としているが、事実上、政府からの要請といえる。
問題解決されないまま…
いらすとや
インターネット業界からは、ブロッキングに明確な法的根拠がなく、憲法や通信事業法が保障する通信の秘密の侵害となりかねないことなどから、反発の声が上がっていた。
こうした状況で発表されたNTTグループによるブロッキングの実施には、提訴の動き以外でも、批判的な反応が相次いでいる。
ISPの業界団体・日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)は、NTTグループの動向に関わらず、今回のブロッキングに反対するとの見解を見直すことは考えていないとの声明を出した。
25日には主婦連合会が「利用者の通信の秘密を侵害しようとする四社に対し、強く抗議するとともに、ブロッキングを行わないことを求める」との意見書を出した。
主婦連は他の通信事業者に対しても「ブロッキングを行わないことを求めます」と訴えた。
そのうえで、NTTグループがブロッキングを実行した場合には、電気通信事業法違反容疑での刑事告発を行うことも辞さないとしている。