議論になっている海賊版サイトのブロッキング問題。
今回、政府が名指しした3サイトの中に漫画海賊版「漫画村」がある。漫画村が事実上閉鎖する直前の月間アクセス数は、約1億6000回だったとされている。
現在はアクセスできない状態になっている
漫画村
コンテンツ海外流通促進機構は、今回名指しした海賊版3サイトによる被害額は約半年間で計4000億円以上と主張している。
漫画家らで結成する日本漫画家協会は2月、「創作の努力に加わっていない海賊版サイトなどが利益をむさぼっている」との声明を出している。
では、出版社はこれまでどのような対策を取ってきたのか。十分な対策をした上でのブロッキング実施なのか。
集英社「10年に渡り対策してきた」
時事通信
人気漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」などを抱える集英社に聞いた。
同社に、「海賊版サイトにどのような対策を取ってきたのか」「海賊版サイトが出版にどれほど影響を与えていたか」などを聞いたところ、書面での回答があった。
以下、回答をまとめる。
まず、「著作者の創作への努力を踏みにじり、コンテンツ創出の基盤を大きく損ねる海賊版サイトには強い憤りを覚えます」とし、同社はこれまで約10年に渡り、以下のような対策を実施してきたという。
- 海賊版サイトへの削除要請・警告書の送付
- クラウドフレアを含む国内外のISP・サーバーへの削除要請・警告書の送付
- レジストラへのドメイン閉鎖要請
- リーチサイトが使用するサイバーロッカー(ストレージサービス)への削除要請
- 裁判所での発信者情報開示請求仮処分手続き
- 検索サービス提供事業者へ検索結果からの表示抑制要請
- インターネット広告の出校停止要請
- 「FreeBooks」に対し、出版社連合で、海外サーバーに対しての現地での法的アクション
- 「はるか夢の址」「ネタバレサイト」「漢化組」(中国語の翻訳海賊版組織)案件では、警察と連携しての摘発
- 教育機関などでの普及啓蒙活動
「FreeBooks」と「漫画村」が状況を変えた
以下のように続ける。
「しかし、一昨年末に登場した『FreeBooks』、そしてそれに続いた『漫画村』という2つのサイトが、海賊版の状況を大きく変えたと思います」
「海外の怪しげなサービスからダウンロードする必要があり、基本、PCユーザー向けを前提としていた、それ以前の海賊版サイトに対し、『FreeBooks』はダウンロード・課金不要で、広告表示もなく、スマホに最適化された非常に読みやすいビューワーを提供しており、その結果、若年層を中心にユーザーが爆発的に増加しました」
「昨年5月に『FreeBooks』は閉鎖しましたが、その後、代替を探すユーザーが『漫画村』を見つけ、さらにユーザー層が拡大していきました。その結果、紙の出版物の売上低下を補う形で、コミックを中心として急増してきて電子書籍の売上が、急減速しています。また、こういったサイトは、秘匿性の高い海外サーバーを利用するなど、年々対策が困難になっていました」
政府のブロッキング事実上の要請については、こう話す。
「そういった状況において、政府が本格的に取り組むという姿勢を示してくれたことは心強く感じます。今後、実効性のある対策が整備されることを強く望みます」
「一方、集英社としては、より使いやすい正規サービスを提供するなどの努力を継続し、悪質な著作権侵害行為に関しては、これからも刑事・民事両面で厳しく対応してまいります」
専門家の見解は?
時事通信
集英社の対策を専門家はどう見るのか。
これまでネット規制関連の議論に何度も関わってきた楠正憲さん(国際大学GLOCOM客員研究員)は以下のように述べる。
「電子書籍の売上が、実際にどの程度の影響を受けたのかは数字を見なければ判断が難しいですが、売上への影響に関わらず、著作物が不正に複製され、閲覧されているのであれば、被害が生じているといえるでしょう」
「海賊版サイトが秘匿性の高い海外サーバーを利用する場合であっても、商業的に影響が出るほど大規模な配信では、日本国内の広告業者や国内に設備を持つ配信業者が加担しているケースが多いです」
「こうした海賊版サイトに対して確実に権利行使できるように、日本国内でしか効果がなく容易に回避できるサイトブロッキングよりも、サイト自体の閉鎖を確実に行えるよう制度を改善すべきではないでしょうか」
BuzzFeed Newsは近日、講談社にも取材を予定している。